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三国志 桃園の巻

吉川英治





 後漢ごかん建寧けんねい元年のころ。

 今から約千七百八十年ほど前のことである。

 一人の旅人があった。

 腰に、一剣をいているほか、身なりはいたって見すぼらしいが、まゆひいで、くちあかく、とりわけ聡明そうめいそうなひとみや、ゆたかな頬をしていて、つねにどこかに微笑をふくみ、総じていやしげな容子ようすがなかった。

 年の頃は二十四、五。

 草むらの中に、ぽつねんと坐って、膝をかかえこんでいた。

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