マイナンバー


マイナンバーがすべてのひとに割りあてられるようになって60年。導入当初は反対もあって大騒ぎだったらしい。

わたしがデジタル庁のID課に配属されたのは、マイナンバーが当たり前になった頃、40年前になる。

日々の生活、光熱費食費から医療費はもちろん、行動した軌跡すべてがマイナンバーで管理される。プライバシーはその上で守られる。

国民すべてに割り振られる個人番号自体、海外ではすでに導入されている国もあって、特別なものでもない。


デジタル庁ID課はマイナンバーの割り振りとカードの発行と回収が仕事。

本人確認は指紋虹彩ほか生体認証が義務づけられているが、日常生活、行動にカードというモノがあった方が便利なので発行している。


「整理券でお呼びしてます~整理券をお取りになって席でお待ちください~」

ロビーは、たぶん、100年前と同じ光景。


「え??再発行できない??って?」

「このナンバーは期限切れですね」

「そんなはずはありません!ちゃんと確認してくだ……」


窓口で崩れおちるひと、亡くなるひとも珍しくなかった。

ID課ではもうひとつ、あまり知られていない仕事があり、ここからその仕事になる。

「引き継ぎ」だ。


課でひとつだけ、ダイアル式の黒電話。といってもダイアルをする必要はない。受話器を持ちあげれば先に繋るので形だけのものだ。

「はい、引き継ぎをお願いします。こちらでのナンバーはNNN-NNN-NNNNです。ええ、先ほどです。こちらでは14時24分44秒でした」

目をやると崩れおちたひとの姿が薄ら透けていくところだった。

マイナンバーでの管理を外れて、あちらの管轄、鬼籍での管理となる。


そもそも、マイナンバー制度はあちらと連絡が取れるようになって導入されたものだった。

わたしのマイナンバーカードも来年で期限切れとなる。

あちらに移るというのがどういうことなのか、どうなるのかは知らない。でも、移る場所があるというのは少し安心できる。


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